「松島を素材にした墨画展を瑞巌寺で開催しませんか」
というお話を頂いたのは、一昨年の夏の終わりのことでした。
その後、何度も松島に足を運び打ち合わせを重ねましたが、肝心のテーマがなかなか決まりません。
ある日の打ち合わせは雄島で行われました。
石碑の苔落とし作業を行なっている最中、心地よいさわやかな風が雄島を吹き渡っていきました。
その風が通り過ぎてすぐ、担当の尾暮学芸員より「〈風〉にしましょう!」とテーマが提案されました。
これまでも、絵画・書・漢詩・文芸等、さまざまな形で表現されてきた「松島の風」。
一説によれば、伊達政宗公は松島湾頭にある千貫島を「値(あたい)千貫即ち一万石」と高く評価したそうです。また、俳人・滝川愚仏は松島を訪れた際に「松島の風には千貫の価値がある」と詠んでいます。
目に見えない「風」をテーマに、との依頼に、墨画で心する〈意連(いれん)〉という言葉が浮かび重なりました。
墨を磨り、和紙に載せる。〈墨色と白〉の日々の積み重ねが今に繋がっていることを実感するとともに、この度の御縁に深く感謝申しあげます。
皆さまの元へ、〈千貫乃風〉が届きますように、と心をこめて制作した墨画を、お時間の許すかぎり、どうぞごゆっくりご観覧ください。
令和5年7月吉日
墨画家 一関 恵美
※意連:連続する点と線、文字と文字との間にある目に見えない意識的な繋がり
作 品 名 | 体裁 | 年代 | 備考 | |
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1 | 瑞巌寺の桜 瑞巌寺住職 吉田道彦 老師着賛 |
仮巻き | 2023 | クリアファイル 原画 |
2 | 瑞巌寺の蓮 瑞巌寺住職 吉田道彦 老師着賛 |
二曲 一隻屏風 |
2023 | |
3 | 伊達政宗甲冑倚像 | 掛軸 | 2023 | |
4 | 高村光雲作 聖観世音菩薩像 |
掛軸 | 2023 | |
5 | 十一面千手観音像 | 掛軸 | 2023 | |
6 | 瑞巌寺本堂室中 | 額 | 2023 | |
7 | 瑞巌寺参道 | 額 | 2023 | 手ぬぐい原画 |
8 | 藤 対幅 | 掛軸 | 2015 | |
9 | 蓮 | 額 | 2023 | 手ぬぐい原画 |
10 | 椿 | 掛軸 | 2020 | ミニトートバック原画 |
11 | 希望 | 掛軸 | 2011 3月 |
東日本大震災 復興手ぬぐい 原画 |
12 | 蔵夏(くらげ) | 掛軸 | 2021 | 阿部勘 日本酒ラベル原画 |
13 | 蔵夏(くらげ) | 掛軸 | 2021 | 浦霞 日本酒ラベル原画 |
14 | 阿吽 菊花龍鳳図 | 掛軸 | 2022 | 阿部勘 日本酒ラベル原画 |
15 | 阿吽 菊花鳳凰図 | 掛軸 | 2022 | 浦霞 日本酒ラベル原画 |
16 | 葡萄 | 掛軸 | 2022 | |
17 | たんぽぽ | 額 | 2021 | |
18 | 浦戸諸島野々島 椿の古道 |
額 | 2023 | |
19 | 連作 つわぶき 4枚組 |
パネル | 2020 | |
20 | 蝋燭 | 額 | 2022 | |
21 | 塩釜港 | 額 | 2021 | 阿部勘・浦霞 Tシャツ原画 |
22 | 石段 | 額 | 2004 | |
23 | 滝 | 掛軸 | 2022 | |
24 | 奥松島嵯峨渓 | 裏打ち | 2023 | |
25 | 千貫乃風 | 衝立 | 2023 | |
26 | 婪尾春 (らんびしゅん) |
六曲 一隻屏風 |
2023 | |
27 | 千貫島 | 風炉先 屏風 |
2023 | |
28 | ICHIGO提灯 3張 | 提灯 | 2023 | 水戸 鈴木茂兵衛提灯 |
29 | 四季扇子 4本 | 扇子 | 2023 | |
30 | 連作 蓮 4枚組 |
パネル | 2020 | |
31 | Rose Garden | 額 | 2023 | クリアファイル原画 |
32 | 宙(そら) | 額 | 2022 | |
33 | 十六夜 | 額 | 2021 | |
34 | 墨色七夕 (すみいろたなばた) 協同作品 |
2023 | 宮城県精神 保健福祉センター、 一関恵美墨画教室 |
瑞巌寺本堂の裏手に咲く枝垂れ桜。
風に舞う桜花。 瑞巌寺ご住職さまに漢詩「看櫻」を添えて頂いた。
クリアファイル原画。
瑞巌寺本堂裏手の小さな池には蓮花が開く。
泥中から暁に向かって花開く。
瑞巌寺ご住職さまに漢詩「荷花」を添えて頂いた。
伊達政宗公が亡くなられて16年後、正室陽徳院がほぼ等身大に制作させたという。
宝物館では傍らに陽徳院像が寄り添っている。
許可を得て制作。
頭の上の小さな仏像は阿弥陀如来。現在、瑞巌寺の庫裡の正面にいらっしゃる。
見上げる位大きな観音さま。
許可を得て制作。
塩釜港から船で渡る野々島。
風の流れでできたのか、艶やかな緑葉のアーチが続く椿トンネル。
くぐると、そこは絵本のような別世界。
瑞巌寺ご住職さまから頂いた和紙に描いてみた。
婪尾春とは、芍薬の異名。
春の殿(しんがり)に艶やかに咲く花。
芍薬愛好家である政宗公に思いを寄せ、時空を越えた様々な芍薬を屛風仕立てにした。
イベント | ○墨画体験ワークショップ 「海を描く」「風を描く」 全2回 墨の濃淡や滲みで表現する墨画。 1つの色が自在に変化する墨の不思議な魅力をあなたも体験してみませんか。 |
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日時 | 【募集人員に達しました】 ①8月19日(土)13:30~15:00 墨画体験「海を描く」 ②9月9日(土)13:30~15:00 墨画体験「風を描く」 |
場所 | 宝物館地階 会議室 |
定員 | 15名(初心者対象・高校生以上) |
参加費 | 1,500円(材料費込み、拝観料別途要) |
講師 | 墨画家 一関 恵美氏 |
※ワークショップに必要な道具類は全てこちらで用意いたします。
※当日は汚れてもよい服装でお越しください。
※拝観券半券のご提示により、当日は再入場可能です。
ご案内 | ○一関恵美氏による制作実演 ワークショップ両日とも、一関恵美氏による制作実演が行われます。 参加費は無料(拝観料別途要)、自由観覧となります。 |
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時間 | 11:00~11:30 |
場所 | 宝物館 エントランス |
墨画家。グラフィックデザイナーを経て独学で墨を追求し、1998年より墨画家・山﨑順子氏に師事。
独立後、仙台を拠点に国内外で作品を発表する。
日本酒ラベル・CDジャケット・アクセサリー・手ぬぐい・パッケージ・ドレス・食器・家具などジャンルを問わず携わり、
墨のイメージを幅広く展開。
生涯学習指導員として精神科アートプログラム、東北被災地支援墨画教室。宮城・岩手・山形にて定期教室。
仙台市在住。
2021年 瑞巌寺本堂・室中(孔雀の間)にて奉納墨画
同宝物館企画展「祈りのこころとそのかたち-東日本大震災から十年-」
特別出品「連作 蓮」